日 程 | 講 師 | 講義テーマ | |
1 | 2024年9月22日 | 横井 公一 先生 | 解離とヒステリー |
2 | 10月27日 | 古賀 靖彦 先生 | 強迫 |
3 | 12月8日 | 館 直彦 先生 | 抑うつ |
4 | 2025年1月19日 | 清野 百合 先生 | 精神病 |
5 | 2月23日 | 鈴木 智美 先生 | パーソナリティ障害 |
6 | 3月23日 | 増尾 徳行 先生 | パラノイアと狂気 |
7 | 4月20日 | 飛谷 渉 先生 | 摂食障害 |
8 | 5月18日 | 高野 晶 先生 | 心身症 |
9 | 6月22日 | 木部 則雄 先生 | 発達障害 |
10 | 7月20日 | 松木 邦裕 先生 | サイコセラピーの目指すものと倫理 |
第1回『解離とヒステリー』横井 公一 先生 |
1895年の『ヒステリー研究』では「性的誘惑」に起因するとされた「ヒステリー」という疾患は、1897年のフロイト自身の転向により欲動論に従って再構成された。そして1980年のDSM-Ⅲに至ると「ヒステリー」という病態は身体表現性障害と解離性障害に解体され、さらには外傷理論の影響の下に解離性障害の理解についてのパラダイムシフトが生じた。本講義では「誘惑から欲動へ、そして外傷へ」という病因論の変化と、それが精神分析の技法に及ぼした影響について考察してみたい。 【参考図書】 ・フロイト(1895):ヒステリー研究.岩波書店など ・J. M. グッドウィン編(1997):心的外傷の再発見.岩崎学術出版社 |
第2回『強迫』古賀 靖彦 先生 |
本講義では、まず、フロイトが定義した「強迫神経症」、およびフロイトの症例「ねずみ男」について述べます。それから、現代精神医学で定義される「強迫症(OCD:Obsessive-Compulsive Disorder)」と「強迫性パーソナリティ障害(OCPD)」の症状と兆候、診断、治療について概説します。時間が許せば、1980年代から精神医学で使われるようになった操作的診断の功罪にも触れたいと思います。 【参考図書】 ・フロイト・S(1909):強迫神経症の一症例についての覚書.藤山直樹編・監訳(2017)『フロイト症例論集2』岩崎学術出版社 ・高橋三郎、大野裕監訳(2014):DSM-Ⅴ 精神疾患の分類と診断の手引.医学書院 ・岩崎徹也(2011):精神分析学から見た操作的診断の功罪、『特集 DSM診断体系の功罪 精神療法 V ol.37 No.5』 |
第3回『抑うつ』館 直彦 先生 |
抑うつはありふれたものであるが、実は手強いものであり、その中でも「死にたい」「消えてしまいたい」といった訴えが厄介であることはどんな臨床家でも経験していることであろう。このセミナーでは、Freudのテキストの再読から出発し、抑うつとナルシシズムが深くかかわりあっていることを踏まえた上で、生と死の欲動二元論の観点から、ナルシシズムの理解を深めることを通して、こうした患者の理解とアプローチについて論じていきたい。 【参考図書】 ・Freud(1914):ナルシシズム導入のために(ナルシシズム入門) ・Freud(1917):悲哀とメランコリー ・Sodré, I(2005):The wound, the bow and the shadow of the object. Note’s on Freud’s ‘Mourning and Melancholia’ in Perelberg (ed): Freud A Modern Reader ・Green, A(2002):A Dual Conception of Narcissism Psychoanal Q 71:631-49 |
第4回『精神病』清野 百合 先生 |
フロイトは精神病患者を精神分析の対象外としました。一方クラインが妄想分裂ポジションや投影同一化などの概念を導入して以降、スィーガル、ローゼンフェルド、ビオンらクラインの弟子たちは、精神病者に対する精神分析を行い、その臨床的知見から新たな理論を構築していきました。本講義では、ビオンの理論を中心に、精神病に対する精神分析的な理解を深めていきたいと思います。 【参考図書】 ・ビオンW.R.著(2013):再考:精神病の精神分析理論.松木邦裕監訳、中川慎一郎訳.金剛出版 ・ヴェルモートR.著 (2023):リーディング・ビオン.松木邦裕監訳、清野百合訳.金剛出版 |
第5回『パーソナリティ障害』鈴木 智美 先生 |
パーソナリティ障害者は、そのこころに非神経症構造を持ち、考えるのではなく行動することによって、その葛藤や苦痛感をこころから排泄する病理をもっています。分析臨床においては、陰性治療反応や治療の行き詰まりがしばしば生じ、治療者は彼らのふるまいに戸惑い、振り回されるゆえ、逆転移のモニタリングが必須になります。学派によってその技法論が大きく異なることも、彼らとの治療の困難さを表してもいるでしょう。しかしながら、彼らとの交流は、ひとのこころの深淵に触れる時間となりえもします。そのこころの在り方について学ぶ時間としたいと思います。 【参考図書】 ・松木邦裕(2021):「パーソナリティ障害」の疾病論と治療概説(古賀靖彦編集代表)精神分析基礎講座.金剛出版 ・松木邦裕、福井敏編(2009):パーソナリティ障害の精神分析的アプローチ.金剛出版 |
第6回『パラノイアと狂気』増尾 徳行 先生 |
精神医学の現場・心理療法の現場で議論をするとしても,精神病,パラノイア,狂気,そして統合失調症の区別は,あまりついていない印象を覚える。それには歴史的・文化的文脈があってのことだろう。ただ精神分析の文脈でパラノイアと狂気をとりあげるとき,それは特有の色彩を帯びる。むろん治療的接近という取り組みも数多くあるのだが,ある種創造性と結びつく思考を導くものもある。精神医学的な思考とは区別されるものとして,パラノイアと狂気についてとりあげてみたい。 【参考図書】 ・フーコー,M. (1961/2020):狂気の歴史.新潮社 ・ウィニコット,D.W. (1971/2015):遊ぶことと現実.岩崎学術出版社 |
第7回『摂食障害』飛谷 渉 先生 |
摂食障害は拒食症であれ過食症であれ、身体と性を舞台とした重い「心の病」です。生命危機に陥った低体重の患者を前にすると、臨床家はしばしばそのことに気づきません。内科的治療や行動療法によって生命危機が和らいでも、心の治療がなされないなら多くの場合再発します。本講では、摂食障害患者の心のあり方、特に「内的な性的両親」の万能的コントロールを伴う悪性の強迫状態ついての理解を提示し、心理療法によるアプローチの方法を解説します。 【参考図書】 ・Lawrence,M.(2008):The Anorexic Mind.Karnac,London.(「拒食症の心的世界(仮題)」(訳)北岡征毅、(解題)飛谷渉 金剛出版2024邦訳出版予定) ・飛谷 渉(2021):エディプス・マターズ――現代クライン派臨床理論から考える心のインフラ.思想1168,岩波書店,東京,pp95-117 |
第8回『心身症』高野 晶 先生 |
精神分析の理論が身体をとらえる時、心身症がまずその焦点となることは言うまでもないものの、精神療法的に取り扱われるケースはあまり多くありません。しかし心と身体の関係はより多彩で臨床に偏在しています。身体化、身体疾患、自殺など、身体のからむ臨床上の問題を精神分析の理論というツールを片手に紐解いてみましょう。 【参考図書】 ・MacDougall, J.(1989):Theaters of the Body.Norton 氏原寛,李敏子訳(1996)身体という劇場.創元社 ・Briggs,S.et al.(ed.)(2008):Relating to Self-harm and Suicide.Routledge(岩崎学術出版社より刊行予定) |
第9回『発達障害』木部 則雄 先生 |
発達障害は生得的なものであり、その問題は精神分析的には早期母子関係にある。これはクラインとアンナ・フロイトの大論争時に、ハイマンが語った投影・摂取によるパーソナリティの基盤ができるとしたことに関連している。この後、ビオンはこれを展開して、コンティナ―のが概念として結実した。本講義では、ASD、ADHDの早期対象関係の支障に関して論じ、発達障害の精神分析的アプローチの困難さについて明確にする。 【参考図書】 ・木部則雄(2015):発達障害のこころの発達.白百合女子大学 発達臨床センター紀要 第18号 3‐16. |
第10回『サイコセラピーの目指すものと倫理』松木 邦裕 先生 |
本年度は「精神分析と精神医学、そして他領域との交差」という年間テーマで各精神疾患の理解を深める企画です。私は精神疾患へのサイコセラピーの目的と有用性を多面的に紹介し、そこで必要とされる治療者-患者関係での倫理にも触れたいと思います。 【参考図書】 ・ケースメント(1991):患者から学ぶ.岩崎学術出版社 |
木部 則雄 先生 | 白百合女子大学 |
古賀 靖彦 先生 | 油山病院 |
鈴木 智美 先生 | 精神分析キャビネ |
清野 百合 先生 | 勝田クリニック/さくら精神分析研究室 |
高野 晶 先生 | 北参道こころの診療所 |
館 直彦 先生 | たちメンタルクリニック |
飛谷 渉 先生 | 大阪教育大学 |
増尾 徳行 先生 | ひょうごこころの医療センター |
松木 邦裕 先生 | 日本精神分析協会/個人分析オフィス |
横井 公一 先生 | 微風会 浜寺病院 |
日 程 | 講 師 | |
1 | 2024年9月22日 | 宿谷 仁美 |
2 | 10月27日 | 片山 貴美子 |
3 | 12月8日 | 川野 由子 |
4 | 2025年1月21日 | 清野 百合 |
5 | 2月23日 | 川野 由子 |
6 | 3月23日 | 増尾 徳行 |
7 | 4月20日 | 片山 貴美子 |
8 | 5月18日 | 宿谷 仁美 |
9 | 6月22日 | 清野 百合 |
10 | 7月20日 | 増尾 徳行 |
〒533-0032
大阪府大阪市東淀川区淡路
3丁目14-15-504
淡路研究室内
FAX: (072)293-4540