日 程 | 講 師 | 講義テーマ | |
1 | 2022年9月25日 | 中村 留貴子 先生 | 自我心理学の基礎:フロイトからアンナ・フロイトへ |
2 | 11月6日 | 栗原 和彦 先生 | 対象関係論の成り立ちと展開 ――フェアベーンによる革新の試み |
3 | 11月20日 | 平井 正三 先生 | クラインとクライン派 |
4 | 2023年1月22日 | 増尾 徳行 先生 | ウィニコットを学ぶ |
5 | 2月19日 | 館 直彦 先生 | 現代の対象関係論 |
6 | 3月26日 | 清野 百合 先生 | ビオンを学ぶ |
7 | 4月23日 | 立木 康介 先生 | J・ラカンは精神分析に何を導入したのか |
8 | 5月21日 | 富樫 公一 先生 | 自己心理学・間主観性理論 |
9 | 6月25日 | 横井 公一 先生 | 関係精神分析 |
10 | 7月16日 | 松木 邦裕 先生 | 日本の精神分析—その歴史と展望 |
第1回『自我心理学の基礎:フロイトからアンナ・フロイトへ』中村 留貴子 先生 |
自我心理学的な理解やそれに基づく議論が活発に行われることは少なくなりましたが、精神内界や精神力動を観察し、理解し、治療関係の促進につなげていくためにも、自我心理学は相変わらず精神分析的理解の基礎として位置づけることが出来ると思っています。とりわけ心理アセスメントにおいては判断の基盤となります。精神分析的な思考を構成し、展開するための自我心理学について、アンナ・フロイトを中心にお話しできればと思います。 【参考図書】 ・「アンナ・フロイトーその生涯と児童分析」大阪精神分析セミナー編「精神分析家の生涯と理論」岩崎学術出版社、2018 ・「ハルトマンの時代とその自我心理学へ」妙木浩之編著「自我心理学の新展開」ぎょうせい、2010 ・「事例検討会のすすめ」、岩崎学術出版社、2021 |
第2回『対象関係論の成り立ちと展開――フェアベーンによる革新の試み』栗原 和彦 先生 |
「対象関係論」を着想し、フロイト理論の新しい展開を試みたフェアベーンの貢献についてお話します。わが国では、彼がその命名に込めた認識を汲み取ることなく「対象関係論」が語られるという異様な事態が展開されていますが、その「成り立ち」は臨床的な革新を意味するものでもあり、同様に、彼の試みには後の理論的発展の萌芽となったアイデアがいくつも含まれています。当日は、その中核を成す“抵抗の本質は愛である”という認識を中心に、彼の発想の展開をご紹介したいと思います。 【参考図書】 ・Fairbairn, W. R. D., 1940-1965, 相田信男監修、栗原和彦編訳、2017、対象関係論の源流――フェアベーン主要論文集、遠見書房 ・栗原和彦『臨床家のための実践的治療構造論』(2019、遠見書房) |
第3回『クラインとクライン派』平井 正三 先生 |
本講義では、メラニー・クラインの位置づけ、その人となりから始めて、その理論と技法のあらましを概説します。クラインと彼女の流れをくむ分析家たちは、フロイトの構造論を独創的な形で展開し、乳児的な心性と非言語的交流という、精神分析に決定的に新しい要素を導入しました。本講義では、できるだけ、彼女の理論と技法が、今日の精神分析実践に持つ含みを明らかにするように試みていき、クライン以降それがどのように展開していったか大まかに見ていきたいと思います。 【参考図書】 ・リカーマン『新釈 メラニー・クライン』岩崎学術出版社 ・ヒンシェルウッド『クリニカル・クライン』誠信書房 ・平井正三『意識性の臨床科学としての精神分析』金剛出版 |
第4回『ウィニコットを学ぶ』増尾 徳行 先生 |
ウィニコット(1896-1971)は,精神分析史上もっとも際立った精神分析家の1人です。彼の精神分析は,小児科医としてのキャリアにおける母子関係の観察と密接に結びついています。そして治療技法という枠組みを超えて,人の心的営みを捉え,賦活しようとするものです。遊ぶこと,抱えること,移行現象といった概念は,その文脈で捉えうるものだと思います。講義は彼の生涯,理論・臨床の展開に沿って述べていく予定です。 【参考図書】 ・Abram, J. 1996 The Language of Winnicott. London: Karnac. 館直彦(監訳) 2006 ウィニコット用語辞典.東京:誠信書房.館直彦 2013 ウィニコットを学ぶ:対話することと創造すること.東京:岩崎学術出版社. ・Winnicott, D.W. 1971 Playing and Reality. London: Tavistock Publications Ltd. 橋本雅雄,大矢泰士(訳) 2015 (改訳)遊ぶことと現実.東京:岩崎学術出版社. |
第5回『現代の対象関係論』館 直彦 先生 |
通常、現代対象関係論とはWinnicott、Bion以降の理論の展開のことを言う。このセミナーではその潮流を概観する。特に、彼らの重要なテーマである、時間性と空間性、欲動と愛、夢の位置づけ、精神分析とは何かおよび精神分析の倫理、などに着目して、現代精神分析の最前線を紹介したい。 【参考図書】 ・Civitarese, G & Ferro, A 2020 A Short Introduction to Psychoanalysis. Routledge (フィールド理論による精神分析入門(仮題)2022刊行予定 木立の文庫) ・Perelberg, RJ & Kohon, G (ed) 2017 The Greening of Psychoanalysis. Andre Green's new Paradigm in Contemporary Theory and Practice. Karnac(アンドレ・グリーンの精神分析入門 2022刊行予定 金剛出版) |
第6回『ビオンを学ぶ』清野 百合 先生 |
W.R.ビオンは、1950年代に精神病の精神分析的理解を深めました。そしてその理解を基盤として1960年代前半にはアルファ機能やコンテイニング等独自の概念を打ち立て、乳児が耐え難い情緒を心に置けるようになるさまや思考の生成のプロセスを描写しました。しかし1960年代半ばに「絶対的真実O」という概念を導入した頃から彼の理論は大きく変化します。本講義では、ビオンの理論について、 O概念以降の晩年の思索も含めて解説します。 【参考図書】 ・Vermote, R. (2018) Reading Bion, London: Routledge. ・Aguayo, J. et al. (ed.) (2018) Bion in Buenos Aires, London: Karnac. 松木邦裕監訳, 清野百合訳(2021)『ビオン・イン・ブエノスアイレス1968』金剛出版 |
第7回『J・ラカンは精神分析に何を導入したのか』立木 康介 先生 |
ラカンが精神分析にもたらした最も大きな変化は、ひとことでいえば、訓練分析家と呼ばれるカーストの絶滅である。にもかかわらず、このことは、ラカン(派)において、訓練分析の一般化(すべての分析は訓練分析であるという見方)とセットになっていた。ウィーン⇒ベルリン⇒ロンドン⇒ニューヨークと遷移してきた世界の精神分析の首都を、1960年後半、パリに導いたのは、ラカンのこの(見かけ上)逆説的な制度改革だった。そうした点を踏まえつつ、ラカン(派)の理論と臨床を概観する。 |
第8回『自己心理学・間主観性理論』富樫 公一 先生 |
この講義では、自己心理学とその周辺の理論について、歴史的変遷をたどりながらお話しします。コフートの自己心理学は、「自己愛(ナルシシズム)の心理学」から「自己の心理学」へと変容することで、精神分析に新たな視座を提供しました。ストロロウらの間主観性理論は、二つの心の相互交流プロセスを描くことによって、治療者に新たな感性を提供しました。そして、そうした理論が必然的にたどり着いたのは、精神分析倫理的転回です。講義当日は、1970年代から現代にいたるこうした道筋をできるだけわかりやすくお話ししたいと思います。 【参考図書】 ・富樫公一(2018)『精神分析が生まれるところ』岩崎学術出版社 ・Togashi, K. (2020) 『The Psychoanalytic Zero』Routeldge. ・富樫公一(2021)『当事者としての治療者』岩崎学術出版社 |
第9回『関係精神分析』横井 公一 先生 |
米国の精神分析は1980年代の「関係性への転回」を機に、一者心理学から二者心理学へと大きく潮流が変化しました。そこで生まれた関係精神分析は今世紀に入って米国の精神分析の新たなスタンダードとして確立され、以後今日までの20年の間にさらに発展を続けています。本講義では関係精神分析の誕生から現在に至る流れを振り返ってまとめてみたいと考えています。 【参考図書】 ・『関係精神分析入門:治療体験のリアリティを求めて』岡野憲一郎・吾妻壮・富樫公一・横井公一著,岩崎学術出版社,2011年 ・『臨床場面での自己開示と倫理:関係精神分析の展開』岡野憲一郎編著,吾妻壮・富樫公一・横井公一著,岩崎学術出版社,2016年 |
第10回『日本の精神分析—その歴史と展望』松木 邦裕 先生 |
フロイト精神分析が我が国で最初に紹介されたのは1913年でした。それから100年以上を経てインターネット時代に入った今日、精神分析は世界中でつながりを作っています。日本もその一つです。この講義では、日本の精神分析史を振り返るだけではなく、我が国の精神分析の現在に現代の世界的動向(国際精神分析学会活動)を重ねて展望します。我が国の精神分析史に関心をお持ちの方は参考図書をお読みください。 【参考図書】 ・前田重治 図説 精神分析を学ぶ 誠信書房 2008 ・北山修 フロイトと日本人 岩崎学術出版社 2011 ・西見奈子 いかにして日本の精神分析は始まったか みすず書房 2019 |
日 程 | 講 師 | 備 考 | |
1 | 2022年9月25日 | 中村 留貴子 先生 | 午前午後合同 |
2 | 11月6日 | 栗原 和彦 先生 | |
3 | 11月20日 | 平井 正三 先生 | |
4 | 2023年1月22日 | 増尾 徳行 先生 | |
5 | 2月19日 | 館 直彦 先生 | |
6 | 3月26日 | 清野 百合 先生 | |
7 | 4月23日 | 立木 康介 先生 | |
8 | 5月21日 | 富樫 公一 先生 | |
9 | 6月25日 | 横井 公一 先生 | |
10 | 7月16日 | 松木 邦裕 先生 | 午前午後合同 |
栗原 和彦 先生 | 代々木心理相談室 |
清野 百合 先生 | 勝田クリニック/個人開業 |
館 直彦 先生 | たちメンタルクリニック |
立木 康介 先生 | 京都大学 |
富樫 公一 先生 | 甲南大学 |
中村 留貴子 先生 | 千駄ヶ谷心理センター |
平井 正三 先生 | 御池心理療法センター・NPO法人子どもの心理療法支援会 |
増尾 徳行 先生 | ひょうごこころの医療センター |
松木 邦裕 先生 | 日本精神分析協会/個人分析オフィス |
横井 公一 先生 | 微風会 浜寺病院 |
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大阪府大阪市東淀川区淡路
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淡路研究室内
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