日 程 | 講 師 | 講義テーマ | |
1 | 2023年9月24日 | 妙木 浩之 先生 | 治療機序:設定、フレーム |
2 | 10月22日 | 中村 留貴子 先生 | アセスメント |
3 | 11月19日 | 藤山 直樹 先生 | 無意識と自由連想―時間・記憶・想起― |
4 | 2024年1月28日 | 横井 公一 先生 | 転移・逆転移とエナクトメント |
5 | 2月25日 | 飛谷 渉 先生 | セクシュアリティと心の生命作用:エディプス・コンプレックスとは何か |
6 | 3月24日 | 清野 百合 先生 | 夢と夢見ること |
7 | 4月21日 | 増尾 徳行 先生 | 遊びと遊ぶこと、そしてNegative |
8 | 5月26日 | 館 直彦 先生 | 分析家の介入―解釈とは何か― |
9 | 6月23日 | 鈴木 智美 先生 | 分析の目的と終ること |
10 | 7月28日 | 松木 邦裕 先生 | プラクティスとしての精神分析―現代の臨床― |
第1回『治療機序:設定、フレーム』妙木 浩之 先生 |
設定や枠が重要な役割を果たすことは間違いない。短期長期、頻度、自由連想の対面非対面、作業する表層のなかでの抵抗分析、長期の転移の醸成といった概念は、どれも精神分析の因子が設定や枠と関わる例だろう。日本では、小此木らによって「治療構造論」が開発されて、独自の文化的な遺産となっている。できれば、それらがフロイトの理論からどう発展してきたかについて解説したいと思う。 【参考図書】 ・フレッド・ブッシュ(2021):精神分析マインドの創造.金剛出版 |
第2回『アセスメント』中村 留貴子 先生 |
力動的な心理アセスメントにおいては、精神内界や精神構造の在りよう、パーソナリティ構造、精神病理などを把握し、併せて精神分析的心理療法の可能性についても判断することが求められます。そのために、不安や葛藤の内容、自我の諸機能、精神発達、症状形成機制などについて可能な限り把握し、見立てを行い、心理療法の方針を検討します。そのような心理アセスメントにおける認識の枠組みと実際について改めて考えてみたいと思います。 【参考図書】 ・妙木浩之編著(2010):自我心理学の新展開.ぎょうせい ・中村留貴子他編著(2021):事例検討会のすすめ.岩崎学術出版社 |
第3回『無意識と自由連想―時間・記憶・想起―』藤山 直樹 先生 |
「自由連想」という項目は「精神分析事典」にはありません。方法としての「自由連想法」があるだけです。精神分析状況のなかでのひとつの方法としての自由連想法と、私たちがともすれば日常生活のなかでもボーっとしているときなどに営んでいる自由連想とはかなり違ったものでしょう。そうした自由連想のなかで、私たちは過去と現在と未来とを行き来しています。そのようなことを起点にしながら、精神分析における時間の問題にタッチしてみたいと思います。 【参考図書】 ・藤山直樹監訳(2014):フロイト技法論集.岩崎学術出版社 ・藤山直樹監訳(2017):フロイト症例論集2.岩崎学術出版社 ・C.ボラス著 館直彦・横井公一監訳(2004):精神分析という経験.岩崎学術出版社 |
第4回『転移・逆転移とエナクトメント』横井 公一 先生 |
精神分析が一者心理学から二者心理学へと変貌していくなかで、個としての患者あるいは/そして治療者が抱く感情とそれに基づく行為の水準の事象は、転移、逆転移、エナクトメントとして概念化されてきた。その概念化は、人のこころとはどのように形づくられて、そしてそれはプラクティスとしての精神分析によってどのように成長を遂げるのかという問いに関わっている。本講義ではその変遷を、欲動と関係性、言語と行為という対立とその乗り越えという視点から描き出してみたい。 【参考図書】 ・Steiner, J. (2006): Interpretative Enactments and the Analytic Setting. International Journal of Psychoanalysis 87:315-320 ・Levenson, E. A. (2006) :Response to John Steiner. International Journal of Psychoanalysis 87:321-324 |
第5回『セクシュアリティと心の生命作用:エディプス・コンプレックスとは何か』飛谷 渉 先生 |
フロイトの最大の貢献は、エディプス・コンプレックスが人の心の核だという発見です。フロイトは、様々な偏見や批判に屈することなく、終生、リビードという性愛エネルギー概念を手放しませんでした。この態度には性愛性(セクシャリティ/エロース)こそ心の生命の根源なのだという学問的信念がありました。本講では、フロイトのリビード論とエディプス・コンプレックス概念の生成過程を示し、それらがクライン、ビオンというクライン派の臨床研究を経て進展する過程を解説します。精神分析に関心を持ち、エディプス・コンプレックスを理解したい方にはもちろん、これから心理療法を学ぼうとしておられる初学者の皆さんの入門にも適しています。 【参考図書】 ・飛谷渉(2021):エディプス・マターズ――現代クライン派臨床理論から考える心のインフラ.思想1168:95-117,岩波書店,東京 |
第6回『夢と夢見ること』清野 百合 先生 |
精神分析において、夢は常に重要で特別な位置を占めています。けれども、それがどのように重要かについては、精神分析の歩みとともに変化してきました。本講義では、夢の心的意義を発見したフロイトと、夢見ることができるようになるまでの心の過程を明らかにしたビオンの理論を中心に、夢と夢見ることについて眺めていきたいと思います。 【参考図書】 ・フロイト (1900):夢解釈(翻訳書:岩波書店、人文書院、日本教文社、新潮文庫など) ・ビオン (1962):経験から学ぶこと(『精神分析の方法Ⅰ』法政大学出版局に所収) ・オグデン (2009):精神分析の再発見.木立の文庫 |
第7回『遊びと遊ぶこと、そしてNegative』増尾 徳行 先生 |
Winnicottは母子関係の観察から、遊ぶことという領野を見いだしました。それは彼による自己論の発展とともに、主観的経験としての位置づけを鮮明にします。やがて彼はプレイセラピーにおける遊びと対比させ、両者の違いをはっきりさせました。この理論的発展において、ネガティヴという概念が暗黙のうちに重要な役割を果たしている、と指摘したのがGreenです。それは経験のうちに生じる脱錯覚のプロセスが、まさにネガティヴとして象徴化のプロセスとなることに呼応します。そもそも私たちは、「存在しないことからのみ、存在することは始まる」というパラドックスを抱えているのです。 【参考図書】 ・ペレルバーグ・コホン編(2022):精神分析のパラダイム・シフト.金剛出版 ・ウィニコット(2015):遊ぶことと現実.岩崎学術出版社 |
第8回『分析家の介入―解釈とは何か―』館 直彦 先生 |
無意識を意識化することが精神分析の目標と考えられていた時代には、解釈は中核的な介入技法であった。しかし、精神分析のパラダイムシフトとともに、解釈はそのような特権的な地位を失っている。それではどのようなメカニズムが変化をもたらすのであろうか。この講義では、そのような問題意識を持ちつつ、解釈とはいったい何かを論じることを通して、精神分析の本質について、検討を加える。 【参考図書】 ・ウィニコット(1968):精神分析における解釈(『精神分析的探究2』所収).岩崎学術出版社 ・ペレルバーグ・コホン編(2022):精神分析のパラダイム・シフト.金剛出版 |
第9回『分析の目的と終ること』鈴木 智美 先生 |
精神分析/精神分析的精神・心理療法は、ふたりの出会いの中で営まれる作業です。そこにいるふたりが何を成しえようとするのか、ふたりで考え歩み始めることです。その目的も終わることも、ふたりの組み合わせによって異なると言ってもよいかもしれません。しかし、その営みが、こころに触れる豊かな時間となるために、アセスメントをどのように行い、どのように契約することが、分析過程の進展に寄与するかをお話しします。ふたりが深く関わり合い、分析的に成しえる何かについて、一緒に考える時間にしたいと思います。 【参考図書】 ・ニナ・コルタート著 館直彦監訳(2007):精神療法家として生き残ること.岩崎学術出版社 ・馬場禮子著(1999):精神分析的心理療法の実践.岩崎学術出版社 |
第10回『プラクティスとしての精神分析―現代の臨床―』松木 邦裕 先生 |
情緒発達や心の構造や力動、精神疾患等に関する貴重な理論やコンセプトが、精神分析ではその臨床プラクティスから導かれます。ゆえに、これらの理論やコンセプトの発展にそのプラクティスは不可欠です。しかしながら精神分析プラクティスの独自さは、実験的に科学的に示された根拠を示し、より短期により安全により費用対効果を高く、という現代社会のデマンドに容易く添うことができません。しかし精神分析は実践に有用なのです。この矛盾、葛藤を抱えた現代の精神分析を紹介します。 【参考図書】 ・松木邦裕(2010):分析実践の進展 精神分析臨床論考集.創元社 ・ケースメント, P. 山田信訳(2009/2021):人生から学ぶ.岩崎学術出版社 |
日 程 | 講 師 | 備 考 | |
1 | 2023年9月24日 | 妙木 浩之 先生 | |
2 | 10月22日 | 中村 留貴子 先生 | |
3 | 11月19日 | 藤山 直樹 先生 | |
4 | 2024年1月28日 | 横井 公一 先生 | |
5 | 2月25日 | 飛谷 渉 先生 | |
6 | 3月24日 | 清野 百合 先生 | |
7 | 4月21日 | 増尾 徳行 先生 | |
8 | 5月26日 | 館 直彦 先生 | |
9 | 6月23日 | 鈴木 智美 先生 | |
10 | 7月28日 | 松木 邦裕 先生 |
鈴木 智美 先生 | 精神分析キャビネ |
清野 百合 先生 | 勝田クリニック/個人開業 |
館 直彦 先生 | たちメンタルクリニック |
飛谷 渉 先生 | 大阪教育大学保健センター |
中村 留貴子 先生 | 千駄ヶ谷心理センター |
藤山 直樹 先生 | 個人開業 |
増尾 徳行 先生 | ひょうごこころの医療センター |
松木 邦裕 先生 | 日本精神分析協会/個人分析オフィス |
妙木 浩之 先生 | 東京国際大学 |
横井 公一 先生 | 微風会 浜寺病院 |
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淡路研究室内
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